今まで作成したサンプルは、危険が潜んでいます。それは、スピードやガソリン残量を直接指定することができるという点です。急発進や、急停車、走行中にもかかわらず、ガソリン残量を変更できてしまいます。このままでは、完成されたオブジェクトとは言えません。
そこで、オブジェクト指向の特徴のひとつである「カプセル化」を使用して、安全なクラスを作成しましょう。クラスを定義する際に、アクセス権を指定することにより、カプセル化を行うことができます。アクセス権は以下のような指定ができます。
アクセス権 | 意味 |
---|---|
public | クラスの内部・外部問わず、自由にアクセスすることができます。アクセス制限のレベルが最も低いアクセス権です。 |
protected | クラスの内部と、派生したクラスからはアクセスすることができます。 |
private | クラスの内部からしかアクセスすることができません。アクセス制限のレベルが最も高いアクセス権です。 |
○ ファイル
Carクラスを修正して確認してみましょう。
ファイルの種類 | PHPファイル |
---|---|
ファイル名 | Car.php |
○ プログラム
次のようにプログラムを入力してください。
Car.php
○ クラス図
○ 解説
5行目と8行目のプロパティのアクセス権は「public」を指定していたため、外部のクラスから直接アクセスできました。今回は、カプセル化をするために一旦これらの行をコメントアウトしてプログラムから外しています。6行目と9行目でアクセス権を「private」に変更することにより、外部のクラスからアクセスすることができなくなります。
すると、このクラスを利用する記述の部分で変化が生じます。プロパティに値を代入したり、参照したりする記述ができなくなります。そのため、必要であればメソッドとして値を代入したり、参照したりする機能を追加しなくてはなりません。
○ プログラム
次のようにCarクラスにメソッドを追加してください。
Car.vb
○ クラス図
○ 解説
Carクラスを利用するクラスからプロパティに代入することで初期化をしていましたが、カプセル化によりプロパティにアクセスできなくなったために、36~39行目ではプロパティを初期化する手続きを用意しました。引数にガソリン量を受け取り、スピード情報を「0km」に、ガソリン量を引数のデータで初期化しています。
また、Carクラスを利用する関数からプロパティを直接参照してスピード情報やガソリン量を取得していましたが、カプセル化によりプロパティにアクセスできなくなったために、42~44行目ではスピードを戻り値として返す手続きを、47~49行目ではガソリン量を戻り値として返す手続きを用意しました。
○ ファイル
では、Carオブジェクトを生成して利用しているプログラムも修正しましょう。「InstanceTest.php」ファイルをコピーして、「CapsuleTest.php」を作成してください。
ファイルの種類 | PHPファイル |
---|---|
ファイル名 | CapsuleTest.php |
○ プログラム
次のように修正してください。
CapsuleTest.php
○ 実行結果
○ 解説
15、18行目では、Carクラスのカプセル化によりプロパティにアクセスできなくなったためにエラーとなります。そのため、コメントアウトしています。その代わりに16、19行目で新たに手続きとして用意されたスピードやガソリン量を取得するメソッドを呼び出しています。
26、27行目では、Carクラスのカプセル化によりプロパティにアクセスできなくなったためにエラーとなります。そのため、コメントアウトしています。その代わりに28行目で新たに手続きとして用意された初期化を行なうメソッドを呼び出しています。
このようにカプセル化をすることにより、クラスの利用者側から直接データを参照・設定できなくすることにより、クラス作成者の意図に沿わない方法で使用されるのを避けることができます。手続きを用意することによって必要な処理をさせることができます。また、クラスを利用する側も特に意識することなく安全に、クラスを利用することができるようになります。
一般的に、プロパティはprivate指定で非公開にして、メソッドをpublicで公開にします。ただし、内部処理などで使うメソッドはprivateにして、外部から利用されないようにします。